感じるからだが教えてくれること:フォーカシングで開く新たな自己理解

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皆さま、こんにちは。日々の忙しさの中で、自分自身の内側の声に耳を傾ける時間はありますでしょうか?

私たちの身体は、言葉にできない感覚や感情を通して、様々なメッセージを発し続けています。「なんとなく胸が締め付けられる」「お腹がキュッとする」「肩に重しが乗ったような感じ」—これらの身体感覚には、実は私たちの心が発する重要なサインが隠されているのです。

フォーカシングは、このような「からだの感じ」に注目し、そこから自己理解を深める心理療法の一つです。傾聴の技術を活用しながら自分自身の内側に耳を傾けることで、日常では気づかない自分の本当の気持ちや欲求に出会うことができます。

本記事では、フォーカシングの基本概念から実践方法まで、段階的にご紹介していきます。自分自身と深く向き合いたい方、心と体のつながりに興味がある方、そして「なんとなくモヤモヤする」気持ちの正体を知りたい方に、新たな自己理解の扉を開くヒントをお届けします。

心の健康づくりに関心のある方、カウンセリングや心理療法に興味をお持ちの方にとって、フォーカシングは自己成長の貴重なツールとなるでしょう。一般社団法人日本傾聴能力開発協会の傾聴サポーター養成講座では、このような自己理解と他者理解の技術を体系的に学ぶことができます。

それでは、身体の感覚から広がる新たな自己理解の世界へ、一緒に踏み出してみましょう。

1. 「フォーカシングとは何か?感覚を言葉にする心理療法の魅力と効果的な実践方法」

フォーカシングとは、私たちの身体が持つ「感じ」に意識を向け、そこから新たな気づきを得る心理療法です。1960年代にユージン・ジェンドリンによって開発されたこの方法は、身体の感覚(フェルトセンス)を手がかりに、言葉では表現しきれない内的な体験を理解していくプロセスです。

私たちの身体は、心の問題や未解決の課題について、言葉よりも先に「何か」を感じています。例えば、胸がモヤモヤする、お腹が重い、のどに何かが詰まっているような感覚—これらは単なる身体症状ではなく、重要なメッセージを含んでいることがあります。

フォーカシングの魅力は、その自己探索の深さにあります。従来の認知療法が考え方の変容を目指すのに対し、フォーカシングは身体感覚という非言語的な領域からアプローチします。これにより、思考のループから抜け出し、新鮮な視点で自分自身を見つめ直すことができるのです。

実践方法は意外にもシンプルです。静かな環境で、まず身体全体に注意を向け、気になる感覚を見つけます。その感覚に「こんにちは」と挨拶し、急かさずにじっくりと対話します。「この感じは何だろう?」「どんな言葉や画像がぴったりくるだろう?」と問いかけながら、感覚の質や意味を探っていきます。

重要なのは、答えを急がないこと。フォーカシングでは「フェルトシフト」と呼ばれる身体感覚の変化が起こるまで、辛抱強く待ちます。この変化が訪れたとき、しばしば「そうか!」という洞察や安堵感が伴います。

臨床心理学の研究では、フォーカシングが不安障害やうつ症状の軽減に効果を示すことが報告されています。また、創造性の向上や意思決定の質の改善にも役立つとされています。アメリカ心理学会のジャーナルに掲載された研究では、定期的にフォーカシングを行った参加者は、自己理解度と心理的柔軟性が向上したという結果も出ています。

日常生活でも簡単に取り入れられるのがフォーカシングの利点です。朝の10分、夕方の通勤中、寝る前のひととき—短い時間でも、定期的に内側の感覚に耳を傾けることで、自分自身との対話が深まっていきます。

フォーカシングは専門家のガイダンスがあれば効果的ですが、基本的には自分で行うことができるセルフヘルプ技法でもあります。国際フォーカシング研究所やフォーカシング・ネットワーク・ジャパンなどの団体が、ワークショップやトレーニングを提供しています。

身体の声に耳を傾け、その知恵を活かすフォーカシング。混沌とした感情や状況に明晰さをもたらし、自分自身と和解する新しい道を開いてくれるでしょう。

2. 「あなたの身体は何を伝えようとしている?フォーカシングで気づく自分の本当の気持ち」

私たちの身体は常に何かを伝えようとしています。胸のつかえ、肩の緊張、胃のモヤモヤ感—これらは単なる身体感覚ではなく、大切なメッセージなのです。フォーカシングはこれらの感覚に意識を向け、そこから自分の本当の気持ちを見つけ出す手法です。

フォーカシングの創始者ユージン・ジェンドリンは「フェルトセンス」という概念を提唱しました。これは言葉にする前の、身体で感じる曖昧な感覚のことです。例えば、会議で発言できなかった後の胸の重さ、大切な決断を前にした腹部のもやもやした感じなど、私たちは日常的にフェルトセンスを経験しています。

フォーカシングでは、このフェルトセンスに優しく注意を向けます。「胸の奥に何か重いものがある」「お腹の中で何かがうごめいている」といった感覚を観察し、その感覚に言葉や象徴(イメージ)を与えていきます。すると興味深いことに、最初は漠然としていた感覚が次第に明確になり、自分が本当に感じていたことが見えてきます。

実践方法は意外とシンプルです。静かな場所で座り、目を閉じて身体の内側に意識を向けます。特に気になる違和感や感覚を探し、その感覚にフレンドリーに寄り添います。「この感覚は何を教えてくれているのだろう?」と問いかけ、答えを急がず、感覚の変化を待ちます。

臨床心理士の伊藤義美氏は「フォーカシングは自己理解のための対話」と表現しています。確かに、身体感覚と対話することで、頭では分析できなかった本当の思いが明らかになることが多いのです。

日本フォーカシング協会の調査によると、定期的にフォーカシングを行う人の約70%が「自己理解が深まった」と報告しています。また、ストレス関連の身体症状が軽減したという報告も多く見られます。

心理カウンセラーの池見陽氏は「からだの感じは常に正直」と言います。私たちの理性は自分を騙すことがありますが、身体感覚は嘘をつきません。だからこそ、身体の声に耳を傾けることで、自分が本当に大切にしていることや、進むべき方向性が明らかになるのです。

フォーカシングは特別なスキルというよりも、忙しい日常の中で見失いがちな「自分の内側の声」を取り戻す営みと言えるでしょう。あなたの身体は今日も何かを伝えようとしています。その静かなメッセージに耳を傾けてみませんか?

3. 「専門家が教える!フォーカシング実践ガイド:自己理解を深める5つのステップ」

フォーカシングは単なる技法ではなく、自分自身との新しい関わり方です。心理療法の世界で高く評価されているこの手法を日常生活に取り入れることで、あなたも内側の知恵にアクセスできるようになります。ここでは、臨床心理士や公認フォーカシングトレーナーが実践している5つのステップをご紹介します。

【ステップ1:クリアリング・ア・スペース】
まず静かな環境で快適な姿勢をとり、目を閉じて深呼吸します。あなたの内側に注意を向け、「今、私はどんな気持ちでいるだろう?」と優しく問いかけてみましょう。浮かんでくる問題や心配事を認識し、いったん脇に置いていくイメージをします。これにより、内側の空間が広がっていきます。

【ステップ2:フェルトセンスを形成する】
気になるテーマを一つ選び、それについて考えるとき、身体のどこかに感じる微妙な感覚(フェルトセンス)に注目します。胸、お腹、喉など、どこでも構いません。その感覚の質感、温度、重さ、形などを、判断せずに感じてみましょう。

【ステップ3:ハンドルを見つける】
そのフェルトセンスを表す言葉、イメージ、ジェスチャーなどを探します。「重たい石のよう」「もやもやした雲」「締め付けられる感じ」など、ぴったりくる表現が見つかるまで試してみましょう。日本フォーカシング協会によれば、この「ハンドル」が見つかると、フェルトセンスとの対話が始まります。

【ステップ4:共鳴させる】
見つけたハンドルがフェルトセンスにぴったり合っているか確認します。「この『締め付けられる感じ』という表現は、今の私の感覚にぴったりだろうか?」と内側に問いかけ、身体の反応を観察します。違和感があれば、より適切な表現を探しましょう。

【ステップ5:問いかける】
フェルトセンスに対して、「この感覚は何を私に伝えようとしているのだろう?」「これは何を必要としているのだろう?」などと優しく問いかけます。ユージン・ジェンドリンが提唱したこの方法では、答えを急がず、沈黙の中で新しい理解が生まれるのを待ちます。

東京カウンセリング・センターやフォーカシング・インスティテュートなどの専門機関では、初心者向けのワークショップも定期的に開催されています。一人で実践するのが難しいと感じたら、こうした機会を活用するのも良いでしょう。

重要なのは、フォーカシングを通じて、自分の内側の声に耳を傾ける習慣を身につけること。批判せず、ただ観察する姿勢を持つことで、これまで気づかなかった自分自身の知恵や洞察に出会えるでしょう。毎日たった5分からでも始められるこの実践が、あなたの人生に新たな展開をもたらすかもしれません。

傾聴心理師 岩松正史

『20年間、傾聴専門にお伝えし続けている心理カウンセラー』

一般社団法人日本傾聴能力開発協会 代表理事。
毎年300回以上研修や講演で登壇し、東京で認定傾聴サポーター®の育成、カウンセラーなどの相談職の方の指導、企業向け研修や、社会福祉協議会でボランティアの育成をしています。

2つの会社を起業。元々は某コンビニチェーン本部で年商一億のノルマに取り組む営業、Webプログラマーに転職後、失業も経験したのちに心理カウンセラーに転身した経験から、気持ちという感覚的な正解を、理屈も交えて楽しく学べると人気の講師。

・公認心理師、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー
・引きこもり支援NPO相談員7年
・若者サポートステーション・カウンセラー(厚労省)
・東京都教職員アウトリーチ・カウンセラー(教育庁)

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