職場の人間関係を変える魔法の傾聴力:1on1面談で信頼を勝ち取る方法

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「話を聴く」という行為は、日常生活でも職場でも欠かせないコミュニケーション手段です。特にビジネスシーンにおいては、上司と部下の間で行われる1on1面談の質が、チーム全体の生産性や組織の雰囲気に大きく影響します。しかし、「聴く」と一言で言っても、その方法や深さによって得られる結果は大きく異なるのをご存知でしょうか。

多くの管理職の方々は「部下の話を聴いているつもり」でも、実際は自分の考えを伝えることに終始し、部下の本音を引き出せていないケースがあります。その結果、信頼関係が構築されず、業務効率の低下やチームワークの悪化につながることも少なくありません。

傾聴とは、単に相手の言葉を受け止めるだけでなく、心理的な安全性を確保しながら、相手の考えや感情を深く理解するスキルです。この傾聴力を身につけることで、1on1面談の質が劇的に向上し、職場の人間関係にポジティブな変化をもたらすことができます。

本記事では、一般社団法人日本傾聴能力開発協会の傾聴サポーター養成講座の知見をもとに、効果的な1on1面談のための傾聴テクニックや、部下との信頼関係構築に役立つ実践的なアプローチをご紹介します。20年以上の傾聴教育の経験を持つ心理カウンセラーが培ってきた方法論を学ぶことで、明日からのマネジメントスタイルを変えるヒントが得られるでしょう。

管理職としてのスキルアップを目指す方、チームのコミュニケーション改善に取り組みたい方、そして人間関係に悩む全てのビジネスパーソンにとって、価値ある情報をお届けします。職場の雰囲気を変える「魔法の傾聴力」を身につけ、より良いチーム作りを始めましょう。

1. 部下の心を開く1on1の極意:傾聴力で職場の信頼関係を構築する方法

多くのマネージャーが1on1面談を実施していますが、真の成果を上げている人はどれくらいいるでしょうか。形だけの面談では、部下との信頼関係を構築することはできません。効果的な1on1の鍵を握るのは「傾聴力」です。単なる会話ではなく、相手の心を開く対話へと変える技術を身につけることが重要です。

傾聴とは「聴く」という行為を超え、相手の言葉の奥にある気持ちや価値観を理解しようとする姿勢です。実際、グーグルが社内で行った「Project Oxygen」という調査では、効果的なリーダーの最も重要な特性の一つとして「良き聴き手であること」が挙げられています。

まず大切なのは、面談時の環境設定です。スマートフォンの電源をオフにし、通知をオフにしたパソコンを閉じ、会議室やカフェなど話しやすい場所を選びましょう。物理的な姿勢も重要で、姿勢を正して相手に体を向け、適度なアイコンタクトを取ることで「あなたに集中しています」というメッセージを伝えます。

次に、「オープンクエスチョン」を活用します。「はい/いいえ」で答えられる質問ではなく、「どのように感じましたか?」「その経験からどんな学びがありましたか?」など、相手の考えや感情を引き出す質問を心がけましょう。IBM社の調査によれば、上司との1on1で自分の考えや懸念を自由に表現できると感じる社員は、エンゲージメントが67%高いという結果が出ています。

また、「アクティブリスニング」の技術も効果的です。相手の言葉を言い換えて確認したり、「それで心配になったんですね」と感情に寄り添う言葉をかけたりすることで、「理解されている」という安心感を与えられます。マイクロソフト社では、マネージャー向けの傾聴スキル研修の導入後、チームのコミュニケーション満足度が38%向上したという事例があります。

沈黙を恐れないことも重要なポイントです。質問の後、すぐに次の質問に移るのではなく、相手が考える時間を与えましょう。沈黙は不快なものではなく、思考を深める貴重な機会となります。メドトロニック社のCEOを務めたビル・ジョージ氏は「最も価値ある情報は、沈黙の後に現れることが多い」と語っています。

傾聴の効果は数字にも表れています。ギャラップ社の調査では、定期的に上司から傾聴してもらえていると感じる従業員は、そうでない従業員に比べて離職率が40%低下するという結果が出ています。1on1面談における傾聴力は、単なるスキルではなく、組織の生産性と人材定着に直結する重要な投資なのです。

2. 管理職必見!1on1面談で信頼関係を築く傾聴テクニック5選

効果的な1on1面談を実施するには、単なる業務報告会ではなく、信頼関係を構築するためのコミュニケーションの場として活用することが重要です。管理職として部下との信頼関係を深めるための傾聴テクニックを5つご紹介します。

①「沈黙」を恐れない
多くの管理職が陥りがちなのは、沈黙を埋めようとすることです。部下が考えを整理している時間を奪わないよう、5秒ルールを心がけましょう。質問の後、最低5秒は沈黙を保ち、相手の思考を尊重します。この小さな待ち時間が、部下の本音を引き出す鍵となります。

②「オープンクエスチョン」を使いこなす
「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、「どのように」「なぜ」「何が」で始まる質問を活用しましょう。「今の業務は順調?」より「今の業務で最も充実感を感じる瞬間はどんな時?」と聞くことで、相手の思考を広げることができます。

③「ミラーリング」で共感を示す
相手の言葉や表情、姿勢を自然に反映させることで、無意識レベルでの信頼関係が生まれます。「それは大変だったんですね」と言うだけでなく、相手の使った言葉を取り入れて「新システムの導入で大変な思いをしたんですね」と返すことで、理解度が伝わります。

④「要約フィードバック」で理解を確認
話の区切りで「つまり、あなたが言いたいのは…」と相手の話を簡潔に要約して返します。これにより誤解を防ぎ、「きちんと聞いてもらえている」という安心感を与えられます。特に感情面の発言は丁寧に扱い、「プロジェクトの遅れにイライラしているんですね」のように感情に名前を付けることで、部下は自分の感情を整理できます。

⑤「質問の階層」を意識する
表層的な質問から徐々に深い質問へと移行します。「最近の業務状況は?」から始め、信頼関係が深まったら「このチームで実現したい将来像は?」といったキャリアやビジョンに関する質問へ。さらに「仕事を通じてどんな人間的成長を遂げたいですか?」など、価値観に触れる対話へと発展させていくことで、形式的な面談から真の信頼構築の場へと昇華させることができます。

これらのテクニックを意識するだけで、1on1面談の質は格段に向上します。ただし、最も重要なのは技術以上に「真摯に向き合う姿勢」です。テクニックは手段であり、目的は部下の成長と信頼関係の構築であることを忘れないようにしましょう。

3. 話を聴くだけで職場が変わる:傾聴力を活かした1on1面談の効果的アプローチ

「上司はいつも話を聞いてくれない」という不満は、多くの職場で耳にする声です。実は、傾聴力を高めるだけで職場環境は劇的に変化します。特に1on1面談において、相手の話に真摯に耳を傾けることで得られる効果は計り知れません。

傾聴のポイントは「聴く」と「聞く」の違いを理解することから始まります。「聞く」が音を耳に入れる行為なら、「聴く」は相手の言葉の背景にある感情や考えまで受け止める行為です。面談中はメモを取る時間よりも、相手の表情や声のトーンの変化を観察する時間を増やしましょう。

効果的な傾聴テクニックとして、「ミラーリング」があります。相手の言葉を少し言い換えて返すことで「あなたの話を理解しています」というメッセージを伝えられます。「それは大変でしたね」ではなく「プロジェクトの遅れで苦労されたんですね」と返すことで、より深い共感が生まれます。

また、質問の仕方も重要です。「なぜそう思うの?」という「なぜ」で始まる質問は相手を追い詰めてしまうことがあります。代わりに「その考えに至った理由を教えてもらえますか?」というオープンクエスチョンを使うと、相手は自分の考えを整理しながら話せるようになります。

実際に大手IT企業のマネージャーが傾聴力を磨いたところ、チームのエンゲージメントスコアが30%向上した事例があります。話を遮らず、相手の意見を最後まで聴くことで、メンバーからは「初めて自分の意見が尊重されていると感じた」という声が上がりました。

傾聴力を高めるには日常的な練習が必要です。面談の際は、「今日はあなたの話を聴く時間です」と明言し、自分の発言量を全体の3割以下に抑えることを意識してみましょう。最初は違和感があるかもしれませんが、相手の表情が柔らかくなり、自然と話し始める変化に気づくはずです。

傾聴の文化は職場全体に波及します。上司が部下の話をしっかり聴く姿勢を見せれば、部下同士でも互いの意見を尊重するようになります。この「聴く連鎖」が職場のコミュニケーションを根本から変える原動力となるのです。

1on1面談を単なる業務報告の場ではなく、真の対話の場にするために、まずはあなた自身が「聴き上手」になることから始めてみませんか。相手の言葉に耳を傾けるだけで、職場の信頼関係は着実に深まっていきます。

傾聴心理師 岩松正史

『20年間、傾聴専門にお伝えし続けている心理カウンセラー』

一般社団法人日本傾聴能力開発協会 代表理事。
毎年300回以上研修や講演で登壇し、東京で認定傾聴サポーター®の育成、カウンセラーなどの相談職の方の指導、企業向け研修や、社会福祉協議会でボランティアの育成をしています。

2つの会社を起業。元々は某コンビニチェーン本部で年商一億のノルマに取り組む営業、Webプログラマーに転職後、失業も経験したのちに心理カウンセラーに転身した経験から、気持ちという感覚的な正解を、理屈も交えて楽しく学べると人気の講師。

・公認心理師、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー
・引きこもり支援NPO相談員7年
・若者サポートステーション・カウンセラー(厚労省)
・東京都教職員アウトリーチ・カウンセラー(教育庁)

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