ジェンドリンの体験過程理論から見る感情との向き合い方

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皆さまこんにちは。今日は心理学の世界で革新的な視点をもたらした「ジェンドリンの体験過程理論」について、感情との向き合い方という観点からお伝えします。

感情が溢れて困ったことはありませんか?「怒りが収まらない」「悲しみから抜け出せない」「不安でいっぱいで前に進めない」…こうした感情の波に翻弄されるとき、私たちは何をすべきなのでしょうか。

実は感情との向き合い方には、科学的に裏付けられた効果的な方法があります。それが心理学者ユージン・ジェンドリンが提唱した「体験過程理論」です。この理論は単なる学術的概念ではなく、日常生活で実践できる具体的なアプローチを私たちに提供してくれます。

ジェンドリンによれば、感情は「抑える」ものでも「発散する」ものでもなく、丁寧に「聴く」ものだといいます。では、感情を「聴く」とはどういうことなのでしょうか?

この記事では、傾聴の専門家として20年以上の実績を持つ一般社団法人日本傾聴能力開発協会の知見も交えながら、ジェンドリンの体験過程理論を通して感情との健全な関係の築き方をご紹介します。

自分自身や大切な人の感情に適切に寄り添いたいと考えている方、心の整理術を身につけたい方にとって、きっと新たな視点と実践的なヒントが見つかるはずです。

1. ジェンドリンが教える「感情の正体」:体験過程理論で人生が変わる具体的アプローチ

「なぜか落ち込む」「理由のない不安」「どうしようもない怒り」—こんな感情に振り回された経験はありませんか?精神分析家ユージン・ジェンドリンが提唱した「体験過程理論」は、感情との新しい向き合い方を教えてくれます。この理論によると、感情とは単なる反応ではなく、体が状況全体を暗黙的に感じ取った「フェルトセンス(felt sense)」という複雑な体験なのです。例えば、胸の締め付けや喉の違和感など、言葉にする前の「からだの感覚」こそが重要なメッセージを含んでいます。このフェルトセンスに注意を向け、「フォーカシング」という方法で丁寧に感じることで、感情の本当の意味が明らかになります。実践するには、まず静かな場所で1分間、自分の体の内側に意識を向けてみましょう。胸や腹部に何か感じるものはありますか?それを言葉や画像で表現してみると、驚くほど新しい理解が生まれることがあります。ジェンドリンは「問題を理解しようとするのではなく、ただ感じる」ことの大切さを強調しています。心理療法の現場でも、クライアントが自分の感情に「滞在する」時間を持つことで、変化のプロセスが始まるとされています。感情との付き合い方を根本から変える体験過程理論は、現代の忙しい生活の中で自分自身を見失いがちな多くの人に、新たな自己理解への道を開いてくれるでしょう。

2. 心理学者ジェンドリンの叡智:体験過程理論で感情と上手に付き合う方法とは

感情とうまく付き合うことは現代社会を生きる私たちの大きな課題です。アメリカの心理学者ユージン・ジェンドリンが提唱した「体験過程理論」は、この課題に対する画期的なアプローチを示しています。ジェンドリンは感情を単なる反応としてではなく、身体で感じる「フェルトセンス(felt sense)」という複雑な全体的感覚として捉えました。

体験過程理論の核心は、私たちの内側で常に流れている「体験の流れ」に注目することです。多くの人は不快な感情を避けようとしますが、ジェンドリンは逆に、それらの感情に意識的に注意を向けることの重要性を説きました。彼が開発した「フォーカシング」という手法では、まず身体の内側に注意を向け、漠然とした感覚を言葉や象徴で表現していきます。

例えば、胸の締め付けるような感覚があるとき、「これは何だろう?」と優しく問いかけ、「プレッシャー」や「責任感」といった言葉が浮かんできたら、それが適切かどうか身体の反応を確かめます。この過程で感情が「動く」感覚(フェルトシフト)が起こり、新たな理解や解放感が生まれるのです。

実践のポイントは、批判せずに自分の内側を観察する「非評価的な態度」です。自分の感情を「良い・悪い」と判断せず、ただ「ある」ものとして認めることから始まります。マインドフルネス瞑想に通じるこの姿勢は、感情に振り回されず、かといって抑圧もしない関わり方を可能にします。

国立精神・神経医療研究センターの研究では、フォーカシングを取り入れた心理療法がうつや不安の軽減に効果を示しています。日常生活では、感情的になったとき「今、私の身体はどんな感じがするだろう?」と内側に注意を向ける習慣をつけることで、感情の嵐に巻き込まれる前に一呼吸置くことができるようになります。

ジェンドリンの体験過程理論は、感情を敵視するのでも無視するのでもなく、身体の知恵として尊重し、対話することの価値を教えてくれます。感情は私たちが自分自身や世界と関わる重要な情報源であり、それに耳を傾けることで、より豊かな人生の選択が可能になるのです。

3. なぜ感情は「聴く」ものなのか?ジェンドリンの体験過程理論から学ぶ心の整理術

感情を「コントロールする」のではなく「聴く」という発想の転換が、現代心理学では重要視されています。ユージン・ジェンドリンが提唱した体験過程理論は、まさにこの「感情を聴く」という姿勢の重要性を科学的に裏付けた画期的な理論です。

体験過程理論では、私たちの内側で常に流れ続けている身体感覚を伴った体験の流れ(フェルトセンス)に注目します。このフェルトセンスは言葉になる前の曖昧な感覚として存在していますが、これこそが私たちの本質的な経験を形作っているのです。

例えば「なんとなく胸が重い」という感覚があるとき、多くの人はそれを無視したり、「気にしないようにしよう」と抑え込もうとしがちです。しかしジェンドリンは、そのモヤモヤとした感覚こそ大切な情報であり、そこに注意を向け「聴く」ことで、私たちの心は自然と前進すると主張しました。

感情を「聴く」とは具体的にどういうことでしょうか。それは単に「悲しい」「怒っている」などとラベリングするだけではありません。体験過程理論に基づくフォーカシングでは、以下のステップが重要とされています:

1. クリアリング・ア・スペース:心の中に静かな空間を作る
2. フェルトセンス:身体で感じる曖昧な感覚に気づく
3. ハンドル:その感覚を表す言葉やイメージを見つける
4. 共鳴:見つけた表現とフェルトセンスを照らし合わせる
5. 問いかけ:その感覚に問いかける
6. 受け取る:生まれてきた洞察や変化を受け入れる

このプロセスを通じて、最初は漠然としていた感情が徐々に明確になり、そこから新たな気づきや行動の変化が生まれていきます。心理療法の研究では、このように感情を「聴く」スキルが高い人ほど、心理療法の効果が高いことが示されています。

日常生活でも、イライラや不安を感じたとき、すぐに否定したり解決しようとするのではなく、まずはその感覚に静かに注意を向けてみましょう。「この感覚は何を伝えようとしているのだろう?」と好奇心を持って接することで、感情は単なる障害物ではなく、自分自身への大切なメッセージとして機能し始めます。

ジェンドリンが示した体験過程理論の真髄は、感情を敵視するのではなく、内なる知恵として尊重することにあります。感情を「聴く」という姿勢は、自己理解を深め、より authenticity(本来性)のある生き方へと私たちを導いてくれるのです。

傾聴心理師 岩松正史

『20年間、傾聴専門にお伝えし続けている心理カウンセラー』

一般社団法人日本傾聴能力開発協会 代表理事。
毎年300回以上研修や講演で登壇し、東京で認定傾聴サポーター®の育成、カウンセラーなどの相談職の方の指導、企業向け研修や、社会福祉協議会でボランティアの育成をしています。

2つの会社を起業。元々は某コンビニチェーン本部で年商一億のノルマに取り組む営業、Webプログラマーに転職後、失業も経験したのちに心理カウンセラーに転身した経験から、気持ちという感覚的な正解を、理屈も交えて楽しく学べると人気の講師。

・公認心理師、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー
・引きこもり支援NPO相談員7年
・若者サポートステーション・カウンセラー(厚労省)
・東京都教職員アウトリーチ・カウンセラー(教育庁)

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